シュモクザメ

シュモクザメ

シュモクザメとは

シュモクザメは、メジロザメ目シュモクザメ科に属するサメの総称です。英名はHammerhead Shark(ハンマーヘッド・シャーク)。頭がまるで金槌のように見えるということでその名前が付けられています。和名のシュモクザメ(撞木鮫)も、頭部が楽器を叩く撞木の形状に似ているところからきています。みんな考えることは一緒なんですね。

シュモクザメとは

シュモクザメの特徴

特徴はなんといってもその特異な形をした頭部です。見た目でほかのサメと見間違えることはまずありません。どうしてこんな形の頭部に進化したかというのには様々な意見がありますが、有力なのはやはり捕食のために特化されたという説です。

捕食の際に重要になるのが、サメの鼻先にあるロレンチーニ器官。これは海中の生物が放つ微弱な電流をキャッチする機能を持っています。シュモクザメは特にこの能力にがほかの種のサメに比べて非常に高く、砂の中に埋まっているアカエイさえも見つけてしまいます。このときまるでダウジングをしているかのように頭部を振り回して獲物を見つけるわけですが、少しでも広範囲の情報をキャッチできるようにこういう頭部の形状になったのでは、と言われています。

さらに捕食の際に大事になってくるのは遠近感です。出っ張るように離れたそれぞれの目で対象を見ることにより、通常よりも遠近感を正確に感じることができます。これにより的確に獲物を捉えて噛み付くことができるわけです。基本的にシュモクザメは捕食者ですので、狩りをするために一番大事な能力を磨いた進化。

そしてこの頭部は捕食時の武器としての役割も持っています。この平たい頭部でエイを上から押し付け、逃げられないように弱らせるのです。大体のサメは鼻先がデリケートなため弱点になりがちなんですが、シュモクザメは進化の過程で弱点ではなく、武器にまで昇華させたというわけです。

センサーの精度向上、遠近感の正確性、獲物を取り押さえる武器。一見おかしな進化をしてしまったように見えるその頭部は、実にハンターとして理にかなった進化の結果だといえるかもしれませんね。

シュモクザメの特徴は頭部のロレンチーニ器官

シュモクザメの種類

先にも書いたとおり、シュモクザメという呼び名はシュモクザメ科のサメの総称です。「シュモクザメ」っていう名前のサメがいるわけではなく、あくまで科としての分類名。アカシュモクザメ、シロシュモクザメ、ヒラシュモクザメ、インドシュモクザメ、ウチワシュモクザメなど、9種類のサメがシュモクザメ科として扱われています。

その中で日本でも観測されるのはアカシュモクザメ、シロシュモクザメ、ヒラシュモクザメの3種です。ざっくりと特徴を書くと以下のとおり。

○アカシュモクザメ
体長は最大で4メートル程度。頭部が湾曲していてゴツゴツし、中央部にくぼみがある。名前の由来は肉が赤いところからきているので、外見が赤いわけではない。日本近海では最も個体数が多く、比較的浅めの沿岸で暮らしている。海水浴場近くで目撃されて、そこを遊泳禁止に追いやってしまうケースがよくある。

○シロシュモクザメ
体長は最大で5メートル程度。アカと同じく頭部が湾曲しているが、あまりゴツゴツしていなくて中央のくぼみもない。名前のとおり、外見が白い。外洋性なのであまり人と遭遇することはない。よく定置網などでほかの魚と混獲されるため、漁人にとってはあまり好ましくない存在。

○ヒラシュモクザメ
英名がグレート・ハンマーヘッドってだけあって、体長は最大で6メートル程度。頭部があまり湾曲しておらず真っ直ぐに近い。ゴツゴツしていなくて中央のくぼみもない。外洋性なのであまり人と遭遇することはない。個体数が少ないが、このサイズで肉食性のため人間に対する潜在的な危険性はかなり高いと言われる。ほかのシュモクザメと違って群れを作らないと考えられている。

シュモクザメの仲間
↑左からアカシュモクザメ、シロシュモクザメ、ヒラシュモクザメ

シュモクザメの食性

シュモクザメは自分より小さな生き物であれば何でも食べます。よくいる小魚はもちろん、エビやカニのような甲殻類、タコ、イカなど様々です。その中でも特に好物なのがエイ。頭部の進化について書きましたが、エイを食べるための進化といってもいいぐらい。発達したロレンチーニ器官や頭部を使ってうまくエイを捕食します。

→エイを捕食するシュモクザメのドキュメンタリー動画(2:50ぐらいから)

シュモクザメの人間への危険性

シュモクザメが人間を襲ったという事件は正確な記録では残っていませんが、大きな体格とその肉食性から、やはり人間にとって危険なサメであると言われています。図鑑やネット上では獰猛な人食いザメとして紹介されていることもしばしば。

しかし基本的には臆病な性格で、ダイバーたちからは遭遇できたらラッキーなシンボル的存在でもあるため、人食い扱いは間違っているという意見も多くあります。また天草で女子中学生がサメに襲われて即死した事件はシュモクザメの仕業として扱われていますが、普段は海底の餌を狙う上に臆病でおとなしい性格のシュモクザメが、海面にいる中学生ほどの大きさの人間を積極的に襲いにいくものなのかという点で疑問が残ります。

どちらにせよ人間になつく存在ではないので、むやみにこちらから近づかないのが最善ではありますが。ダイビングで観察するにしても刺激を与えるようなマネだけは絶対にしないことです。どんなにおとなしいサメであろうと暴れだしたら人の手に負えるサイズではありません。

シュモクザメの群れ

社会性のあるシュモクザメの生活

シュモクザメはサメの中では珍しく、大きな群れを作って行動するときがあります(ヒラシュモクは除く)。このサイズのサメが数百匹単位の群れで回遊している様子は圧巻で、その幻想的な光景はダイバーを例外なく魅了します。日本だと静岡県の神子元島付近の海で観察できるらしく、ツアーなんかも組まれているみたいですね。

群れる理由はいまのところはっきりとはわかっていません。集団で狩りをするサメではないですし、単体でいても脅威になるような敵もほとんどいません。安全に確実に遠距離の回遊をするためというのが有力なところでしょうか。その回遊の理由が、新しい餌場探しなのか、はたまた産卵目的なのかはわかりませんが。

ちなみに繁殖方法についてですが、シュモクザメは10匹~30匹程度の稚魚を生みます。なるべく安全な浅い海で産み落とされますが、他のサメに食べられることが多くて生き残るのはわずか。シュモクザメがシュモクザメの稚魚を食べるなんてことも普通にあるようです。ああ、弱肉強食。

シュモクザメは比較的飼育がしやすいため、日本でも多くの水族館で見ることができます。しかしそこで驚かされたのが単性生殖(単為生殖)に成功したというニュース。雌だけしかいない水槽で飼われているにも関わらず子供を産んだのです。

これはシュモクザメに限らず、カマストガリザメやトラフザメでも同様の事例が報告されています。長い期間、雌だけの環境にしておくと適応してしまうんでしょうか。映画「ジュラシックパーク」もそんな感じで大変な惨事に発展したような。生き物ってホントすごいですね。

シュモクザメ

シュモクザメのドキュメンタリー「Blue World」の動画: