【サメ】オオメジロザメの生態

オオメジロザメ

 

サメ好き演劇人が解説するサメの生態シリーズ!

今回はオオメジロザメです。

 

 

サメと言えば人を襲う危険なイメージを持っている人も多いかと思います。

一言でサメといっても500種以上が存在していて、そのほとんどは人間に対してまったく危害を加えないのですが、逆に言えばほんの一握りの種のサメは人間を襲う可能性を持っています。

このオオメジロザメもその危険なサメの1種。

もしかしたらホホジロザメイタチザメよりも危険であると言えるかも?なサメです。

 

さぁ、今回はそんなオオメジロザメの生態の解説です。

はりきってどーぞ!

 

1.オオメジロザメとは

オオメジロザメ

オオメジロザメは、メジロザメ目メジロザメ科に属するサメです。ずんぐりした体型や高い攻撃性が由来で英名はBull Shark(ブル・シャーク)。レッド・ブルのあの「ブル」ですね。日本でも地域によってはウシザメと呼ばれることがあるそうで、英名と和名の意味が一致するというサメの中では珍しいパターンですね(笑)

ちなみにBull Shark(ブル・シャーク)とは別にBlue Shark(ブルー・シャーク)なんてのがいて音だけだと紛らわしいですが、後者はヨシキリザメのことです。

 

2.オオメジロザメの身体的特徴

オオメジロザメのサイズ感

オオメジロザメの大きさ

画像引用元:YouTube Diving With Bullsharks | World’s Biggest Bullshark

オオメジロザメのサイズはおおよそ2メートルから3メートル程度で、メスのほうが大きく育つ傾向にあります。三大危険なサメとされてよく名前を並べられるホホジロザメやイタチザメと比べると、サイズはやや小振りな感じではありますね。

確認されている個体の中で大きな例はメスで4メートルという報告があり、おそらく現時点ではこれがオオメジロザメの最大サイズになるのではないでしょうか。それ以上の大きさの目撃情報は目にしたことがありません。

 

オオメジロザメのシルエット

ブルシャーク

画像引用元:YouTube Why Do Young Bull Sharks Enter Rivers?

「この部分がこうならオオメジロザメだ」というような一目で判別ができる独自の特徴はありません。ただし以下のような部分をみていけばオオメジロザメであると総合的に判別することは難しくないです。

・ずんぐりとした太めの体格
・縦方向にも太いシルエット
・イタチザメに近いようなふっくらとした顔立ち
・丸みのある鼻先
・体の太さに比べて小さめの鎌形の第1背ビレ
・ネコ目
・エラがやや短い
・背中は灰色で、グラデーション的に腹側に白くなっていく

 

オオメジロザメの顎と歯

オオメジロザメの上顎の歯は三角形をしていて強い鋸歯があり、逆に下顎の歯はやや細く尖った形状をしています。上の歯はホホジロザメに近く、下の歯はアオザメに近い感じ。下顎の細い歯で獲物を逃げられないように突き刺して固定して、その後頭を左右に振ることで上顎の歯でノコギリのように獲物の肉を切り裂いています。

ほかの大型のサメにも言えることですが、とくにオオメジロザメは目の前にあるものを咬むことでそれが何かを識別する傾向にあります。食べ物と判断されなければそのまま離してくれるかもしれませんが、人間にとってはその一咬みで大惨事になりかねません。

 

オオメジロザメの寿命

オオメジロザメ

画像引用元:YouTube Diving With Bullsharks | World’s Biggest Bullshark

環境にもよりますが、大体10歳前後で成熟すると言われています。それまでは年間15センチ程度だった成長力が少なくなっていき、最終的には5センチ程度になってしまうことから、いくら長生きしたからといって映画のようなモンスター級の大きさに到達することはないようです。

自然界での寿命は20~30年程度ではないかという推測が多いようですが、美ら海水族館で飼育されている個体は2018年時点で40歳を迎えています。このサメは現在は展示されておらずバックヤードでの飼育になっているようです(もし死亡したなら何かしらアナウンスがあると思いますが、とくにそういったものもないので今も生存しているのではないでしょうか)。

 

オオメジロザメの繁殖

ブルシャーク

画像引用元:オオメジロザメ|ジョナサン・バードのブルーワールド

繁殖期は夏から秋にかけて。基本的にオオメジロザメは群れて行動することがないので、同じ餌場で偶然出会った個体同士でつがいになると考えられます。

「鮫」という漢字が示すとおり、交尾にて生殖活動を行います。オスとサメが逆さまになって、オスがメスの尾に咬みついて交尾をするため、たびたび体表に傷がついたメスが観測されることがあります。

オオメジロザメは卵胎生で、稚魚は雌の体内で10匹程度が孵化します。哺乳類でいうヘソの緒のような器官があって、それにより母親から栄養をもらって体内で長い時間を過ごします。約1年間の妊娠期間を経て母ザメは河口付近などの比較的な安全な場所に移動し、そこで60~80センチ程度になった稚魚達を出産します。

 

3.オオメジロザメの生息域

bull shark

画像引用元:YouTube Why Do Young Bull Sharks Enter Rivers?

生息域は温かい海の沿岸部で、紅海、モルディブ、地中海以外の温かい海ならどこにでもいます。日本では沖縄付近でよく目撃されます。あくまで行動エリアは沿岸部のみで、遠洋ではほぼ見かけられません。海面近くを泳ぐことはあまりなく、海の中でそこに近いエリアを好んで泳いでいることが多いようです。

オオメジロザメの生態を語るときに特筆されるべきは、その淡水への適応能力でしょう。オオメジロザメは河川にも平気で侵入、それもかなり上流のほうまで上ることができます。ミシシッピ川、ザンベジ川、アマゾン川を数千キロさかのぼったような場所にも出没し、ときには地元住民への事故の原因になることもあります。

淡水域へのオオメジロザメの侵入で有名なのはニカラグア湖。中南米にあるこの湖はサンファン川でカリブ海とつながっているんですが、オオメジロザメはこの川を100kmもさかのぼり、途中の早瀬すらもサケのごとく通過していくとのこと。それだけオオメジロザメにとって住みよい湖だったんでしょうか。現在はこの川に障害物があるせいで行き来ができないこと、乱獲が進んでしまったことによりニカラグア湖のオオメジロザメは絶滅の危機に瀕しています。

日本でも沖縄の安里川上流700メートル地点で1メートルの個体が8匹も釣り上げられた例があります。専門家によれば、さすがに安里川をこれ以上の大型の個体がさかのぼるのは限界があるとのことですが、泳ぐことができるギリギリの浅い場所でも侵入すること、先に記述した早瀬をさかのぼる能力のことを考えると人を襲えるサイズの個体が絶対に侵入してこないという保証は正直しづらいところですね。

最近の研究では、オオメジロザメは若い個体は淡水域や汽水域で過ごすことが多く、成熟した個体は海で過ごすことが多いことがわかってきました。これはオオメジロザメの稚魚によって淡水域のほうが敵が少なく餌も豊富であることが理由と考えられています。

 

4.オオメジロザメの食性

オオメジロザメの顎

画像引用元:YouTube Why Do Young Bull Sharks Enter Rivers?

オオメジロザメは雑食性で多種多様なのものを食べます。メインの食事は硬骨魚類ですが、ほかには小型のサメやエイ、イカなどの軟体動物、甲殻類、イルカ、海鳥、ウミガメなども捕食し、川では牛やカバのような大型の哺乳類を襲った例まであります。詳しくは後述しますが人間も捕食対象になってしまう可能性があります。

 

水面を漂うワニを襲おうとするオオメジロザメの動画

 

5.オオメジロザメの天敵

オオメジロザメは稚魚の時点で60~80センチはあるため、天敵はそれよりも体が大きなサメなどに限られます。そのため体が小さい稚魚時代はできるだけ大型の敵がいない淡水域で過ごすことが多いようです。海外では若い個体が大型のワニに捕食されている写真が見られたりしますね。

大きく成熟して2メートルを超えてくると天敵はほぼいません。このサイズを超えてくると可能性があるのは大型のホホジロザメやイタチザメぐらいでしょうか?シャチも考えられますが生息域がほとんど被らないので遭遇することはまずないと思われます。

 

6.人間から見たオオメジロザメの危険性

浅瀬にまでやってくるブルシャーク

↑住宅のすぐ裏庭のところまで侵入してきたオオメジロザメ

画像引用元:YouTube 9ft Bull Shark Spotted In Florida ‘Backyard’

前述したとおりオオメジロザメは、ホホジロザメ、イタチザメに並ぶシャークアタック御三家の一角です。ほかの2種よりも体格は小さいですが、沿岸性であり、さらに淡水域や汽水域に入れることから人間との遭遇率が高く、それを踏まえると危険度はこのオオメジロザメがトップではないかという声も聞かれます。

日本は小さな川が多くて大型のオオメジロザメがそこまで侵入してくる可能性は低いと考えられますが、海外では上の写真のように「こんな大きさのサメがこんなところに!?」という事例はたくさんあります。洪水の後のゴルフ場の池だったり、人工的に舗装されたような水路だったり。。。

性格の面でもオオメジロザメは臆病で警戒心が強いという話もありますが、積極的かつ好奇心が強いという情報の方を多く耳にします。実際にオオメジロザメが原因とされる口咬事故は世界各地で多く報告されており、「人間にとって安全なサメではない」という事実は揺るがないものと言えるでしょう。

 
スピアフィッシングの際にオオメジロザメが猛突進してきた映像:

 
実際にふくらはぎをオオメジロザメに咬まれてしまったときの映像:

 

7.水族館で出会えるオオメジロザメ

日本の水族館では、残念ながら2023年時点でオオメジロザメを見ることができる水族館は存在しません。以前展示を行っていた京急油壺マリンパークは閉館してしまいましたし、オオメジロザメの長期飼育記録を持つ美ら海水族館も前述したとおり展示水槽には入っていません。同水族館では繁殖にも成功しているので、おそらくバックヤードでは複数の個体が飼育されているとは思われますが。

ただオオメジロザメは雑食性が強くてとにかく同じ水槽の中の生き物を食べ荒らしてしまうそうです。同じ水槽に入れて被害に遭わなかったのはジンベエザメぐらいと語る人もいるぐらい。水族館にも経営的な事情があるでしょうから、オオメジロザメの展示を永続的にというのはハードルが高いのかもしれませんね。

 

8.オオメジロザメを食べる

フロリダでオオメジロザメを釣って、さらにそれを料理してフィッシュバーガーにして食べている男性の動画。大型のサメについては各国で保護目的の規制が多くありますが、この動画のケースはフロリダ州の魚類・野生動物保存委員会のルールに基づいてOKなんだそうで。動画内に出てくるフィッシュバーガー、普通に美味しそうですもんね。

 

9.オオメジロザメが出てくるサメ映画

世の中にはとんでもない数のサメ映画が制作されていますので、人間にとって危険なサメであるオオメジロザメも出番がひっきりなし、と思いきや。実はオオメジロザメが主役のサメ映画はほとんどありません。

唯一オオメジロザメが主役モンスターになるのは『ディープ・ブルー2』。名作『ディープ・ブルー』の続編ですが、登場するサメをアオザメからオオメジロザメに変更しただけのリメイクのような形で、制作費は少なく、前作の良さをすべて放棄したようなB級映画になっています(笑)

【映画】ディープ・ブルー2
ディープブルー2育児で映画館なんて言ってる暇ねーぜ!って人の強い味方Amazonプライム!今回は私が大好きなジャンル、サメ映画でございます。ディープ・ブルー2を観たよ!前作...

 

あと、『ジョーズ 恐怖の12日間』というアメリカで実際にあったニュージャージーサメ襲撃事件をオマージュした作品があります(こちらもB級)。劇中に登場するのはホホジロザメではありますが、史実のほうではマタワン川で起きた襲撃3件に関してはホホジロザメではなくオオメジロザメであったのではないかという可能性が示唆されています。

【映画】ジョーズ 恐怖の12日間
ジョーズ 恐怖の12日間B級サメ映画を真剣に楽しもうぜシリーズ!はい、今回は『ジョーズ 恐怖の12日間』だよ!この作品は2004年に作成されたテレビ映画。製作直後はアニマルプラネッ...

 

10.オオメジロザメの動画

動画1.川に人食いザメ現る?淡水にも現れる危険ザメNo.3!オオメジロザメを徹底解説!【Bull shark】【沖縄国際通り】

動画2.サメと遭遇したカバの群れ | ナショジオ

動画3.Diving With Bullsharks | World’s Biggest Bullshark

動画4.Bull Sharks! (HD) | JONATHAN BIRD’S BLUE WORLD

動画5.Bull Shark Feeding Dive, Playa del Carmen, December 2022

 

11.オオメジロザメまとめ

以上、オオメジロザメの生態でしたー。

 

オオメジロザメが人間にとって危険があるサメなのは間違いないですが、何でもかんでも襲ってくる狂暴なホラー映画のモンスターみたいな存在というわけでもなく。その生態を知って、正しく付き合っていきたいですな。

あ、毎回書いてますが、私自身の判断でWebやいろんな書籍から信頼に値すると思える情報をチョイスして書いております。もしかしたら後々に誤情報と発覚するような内容も含まれているかもしれませんが、どうか温かい目でご容赦くださいません(たぶんそれほど見当違いにズレた情報はないとは思うんだけど、いちおう)。

 

さーて、次はどのサメにしますかね。

したらな!

 


参考Web:
Wikipedia オオメジロザメ
Wikipedia(英語版) Bull shark
ととクル 「危険?川にまで侵入してくるオオメジロザメとは【淡水に潜むサメの脅威】」
Board-Gill 「川や湖に人喰いザメ?オオメジロザメの特徴や生態について簡単解説!」
Board-Gill 「実は世界で一番危険?川にも入ってくる危険ザメNo.3オオメジロザメの食性について解説!」
あにまるじゃんくしょん 「実はオオメジロザメの危険度はホホジロザメを凌駕!?危険度No1と噂されるオオメジロザメの驚異の能力とは」
東京大学 大気海洋研究所 「オオメジロザメはなぜ河川でも生息できるのか? その生理学的メカニズムの解明」
NWF Bull Shark
The Australian Museum Bull Shark
Oceana Bull Shark
Britannica Bull Shark
Marine BIO Bull Shark
Florida Fish and Wildlife Conservation Commission Bull Shark
Animal Diversity Bull Shark

参考書籍:
ほぼ命がけサメ図鑑
サメガイドブック
世界サメ図鑑

コメント




タイトルとURLをコピーしました