【サメ】ミツクリザメの生態

ミツクリザメ

画像引用:悪鬼が泳ぐ!ゴブリンシャーク映像記録

 

サメ好き演劇人が解説するサメの生態シリーズ!

どうしてわざわざ演劇人がサメを語るのか、そのへんは気にした時点で負けだ!

 

 

はい、今回はミツクリザメです。

 

 

以前紹介したラブカメガマウスと並んで三大レアザメ的な扱いになってる種。

なかなかお目にかかれないのでサメマニアの中でもかなり人気のあるサメですね。

 

ちなみに自分は2013年に八景島シーパラの水族館に数日間だけ展示されたところに足を運んで生で見たことがあります。

へへ!生で見たんだぞいいだろう!と軽くマウント取ってから生態解説スタート。

こいつ性格悪いぞこいつなんて思わず、まぁ楽しんでってください(笑)

 

さぁ、まだまだ謎の多い深海ザメ・ミツクリザメ。

はりきってどーぞ!

 

1.ミツクリザメとは

画像引用:リアルエイリアン! 顎ごと飛び出して噛みつくモンスター ゴブリン・シャーク

 

ミツクリザメは、ネズミザメ目ミツクリザメ科に属するサメです。

ミツクリザメという和名は、世界で初めてのミツクリザメ発見者の1人であった帝国大学の箕作佳吉(みつくりかきち)氏の名前から取られています。そのため学名も「Mitsukurina owstoni」と氏の名前が入っています。

英名では「ゴブリン・シャーク(Goblin Shark)」と呼ばれています。こちらの由来はいくつか説があり、角があって顎が飛び出すその顔が鬼のように見えるから、水揚げ時に顔が充血してグロテスクな状態になった姿が鬼のように見えるから、などが言われています。

大抵の深海生物は水揚げすると形が崩れてひどいビジュアルになってしまうのは当たり前なので、後者の説のように水揚げ時の姿を由来にして命名しちゃうのはちょっと可哀そうな気もします(笑)

 

2.ミツクリザメの身体的特徴

ミツクリザメのサイズ感

ミツクリザメは大体200~250cm程度で成体とされ、正式なものでは380cmの個体が記録されています。ただし2000年に捕獲されたメスの個体は500cmを超えていたという話もあり、一部の研究では成長すれば700cmを超えるのではないかという結果が示唆されているそうです。

とはいえ、基本的にはほとんどの発見例が200cm程度。まだまだ未知が多い深海のことなので確たることは言えませんが、個人的には700cm超えのミツクリザメってちょっと無理があるんじゃないかなぁとは思います。

↑いつどこで捕獲された個体かわかりませんが、これは400cm近くありそうな感じです

画像引用:YouTube ミツクリザメ

 

ミツクリザメの体色

体色は基本的には白色から薄い灰色。若い個体ほど体表の色が薄く、成長していくとより灰色が濃くなっていくと考えられています。また体表は血管が透けて見えており、そのため若い個体であるほど体表がほんのりピンク色に見えます。しかし水揚げされて死んでしまった後は血液が酸化してしまうのか、その体表の色はくすんで褐色になってしまいます。

 

ミツクリザメの形状的な特徴

画像引用:YouTube The Goblin Shark | What the Shark?

ミツクリザメはその体において長く伸びた吻(鼻先)と尾びれが占める割合が大きいこと、さらに比較的スタイリッシュで細長い体型をしていることから、250cm程度の個体でも見た目的にはより小さく感じることかと思います。

背びれや胸鰭は丸く小さく、尾びれは上葉が長く発達していて逆に下葉は非常に短くなっています。これらは海底近くをゆっくりと泳いで生活しているサメの特徴に共通していて、ミツクリザメもそのような生活スタイルをとっているのではないかと言われています。

 

画像引用:リアルエイリアン! 顎ごと飛び出して噛みつくモンスター ゴブリン・シャーク

最大の特徴は前述したとおり、非常に長い吻。まるで天狗のように長く前方に突き出しています。この吻は敵を攻撃するためのツノのように思われがちですが、実際にはとても柔らかくフニャフニャしています。サメ特有の微弱電流を探知するロレンチーニ器官がここに集中しており、ミツクリザメはこれを使って暗い深海でも獲物放つ微弱電流を感知してを探し当てることができるのです。

この吻の形が8500万年前に生息していた古代ザメ・スカパノリンクスとそっくりであることから、古代から姿をほとんど変えていないサメ「生きた化石」と呼ばれています。

 

ミツクリザメの顎と歯

画像引用:悪鬼が泳ぐ!ゴブリンシャーク映像記録

ミツクリザメのもうひとつの大きな特徴は前方に飛び出すおぞましいアゴ。実はこのアゴが飛び出す仕組みは、サメの仲間の中ではけっこう普通のこと。ホホジロザメもアオザメも、イタチザメも、シロワニも、肉食性のサメのほとんどは獲物に喰らいつく瞬間にアゴが前方に飛び出す仕組みになっています。

ただし、やはりこのミツクリザメの飛び出し具合は他のサメとは一線を画しています。顔の形が完全に変わって見えるレベルでアゴが飛び出す光景には、何度でもビックリさせられます。

ミツクリザメの顎

↑咬みつくときに顎部分がとんでもなく前にスライドしている

 

歯は手前のほうに非常に細く鋭いものが無数に並んでいて、アオザメなどに近い形状をしています。こういった歯の形状は、イカやタコなどの頭足類を捕らえるのに適しています。獲物を磨り潰せる奥歯も持っているので、硬骨魚や甲殻類を食べることも可能。獲物が決して豊富とは言えない深海では、様々なものを食べられる歯のほうが生存競争では有利に働きますね。

 

3.ミツクリザメの生態

ミツクリザメの生息域

画像引用:悪鬼が泳ぐ!ゴブリンシャーク映像記録

非常に発見例が少ないミツクリザメですが、意外に世界中いろんな海で発見されています。そのため分布は限定的ではなく、サメが好む条件さえ整ってれば比較的広範囲に生息域が広がっていると考えられています。

その中でも実は日本がミツクリザメの発見例がとても多いメッカ。駿河湾や東京大渓谷では多くのミツクリザメが発見されており、箕作氏が世界で初めて採取した個体も日本にて捕獲したものでした。

またミツクリザメは海溝の斜面部のような場所を好み、100m~1000mぐらいの深い海を漂っています。若い個体ほど浅い深度に滞在することが多いようで、人間の漁で捕獲される個体に比較的小型なものが多いのはこれが理由かもしれません。

 

ミツクリザメの主食

ミツクリザメは硬骨魚、イカやタコなどの頭足類、エビなどの甲殻類を食べています。海底で過ごすような生き物を多く食べているため、捕食の際には海底近くで長い吻に内蔵されたロレンチーニ器官を活用して狩りを行っているのではないでしょうか。

動きは緩慢であると推測されるため、ゆっくりと獲物に忍び寄り、突然飛び出す顎と周囲の水ごと吸い込む吸引力で一気に獲物を咥え込むスタイルが想像されます。

画像引用:YouTube The Goblin Shark | What the Shark?

 

ミツクリザメの天敵

ミツクリザメは深海において比較的大きな体格であるため天敵は少ないと考えられます。ただしホホジロザメやイタチザメといった大型肉食性のサメと生息域が重なる部分もあるので、もし遭遇すればターゲットにされてしまう可能性はあると思います。

あとは体格差があった場合は、ダイオウイカやカグラザメやオンデンザメといった深海の大型肉食種に捕食されてしまうことはあるかもしれませんね。まだその様子は誰にも観察されたことはないので何とも言えませんが。

 

ミツクリザメの繁殖

現時点でミツクリザメの生殖方法は不明。おそらく他の大型のサメと同様に母親ザメの体内で未受精卵を食べて育つ卵胎生だとは推測されますが、確かなことはわかっていません。

また同様に交尾を行う時期や繁殖サイクル、生まれてくる子供の数など、何もかもがまだ判明していません。東京大渓谷の入り口付近でミツクリザメの幼魚を多く発見したという話もあるので、子供を生み出すタイミングではもしかしたら比較的海面近くまで浮上してくるのかもしれませんね。

 

↑動画内でミツクリザメは浅くて栄養資源が多い場所までやってきて子供を産むのではないかという推測が立てられています。

 

4.ミツクリザメと人間の関わり

普通に生きていれば野生のミツクリザメと出会うことはまずありません。なのでこのサメが直接人間に危害を加えるような出来事が起こる可能性はこれからもほぼないでしょう。

ミツクリザメが他の魚に混獲されて水揚げされることは日本でもたまにあることで(というか日本が一番その事例が多い)、漁師さんの計らいで研究施設や水族館に移送されることがあります。残念ながら外道としてその場で海に捨てられてしまうこともあるようですが。

しかし運よく施設に運ばれたとしても、深海の環境を人の手で実現することは難しく、成体が展示されてもすぐに衰弱して死んでしまいます。いつかの日かミツクリザメに適した状態を作れるまでに技術が進歩することを願っています。。。

ミツクリザメ

↑2013年八景島にて私が撮影したもの。残念ながらこの数日後には皆死んでしまいました。

 

5.ミツクリザメの水族館展示

①東京葛西臨海水族園

日本で一番ミツクリザメを長生きさせたのはいまのところココです。最長記録は2014年11月の個体の17日間。日本でもミツクリザメの飼育試行回数は多い場所で、ノウハウを蓄積しながら展示の方法を模索している最中とのことです。

・1995年4月13日~4月17日(5日間)
・2007年1月25日~1月27日(3日間)
・2007年3月27日~4月10日(14日間)
・2009年1月17日~1月21日(5日間)
・2011年2月2日~2月7日(6日間)
・2014年11月1日~1月17日(17日間)

 

 

②八景島シーパラダイス

2013年11月にカニ用の刺し網にて捕獲された11匹を展示したことで話題になりました。また2016年にはラブカと同時展示というサメマニアにはたまらない出来事も。この水族館も過去に何度もミツクリザメの飼育に挑戦しています。

・2010年3月3日~?
・2011年4月29日~?
・2012年2月3日~2月6日(4日間)
・2012年11月10日~11月15日(6日間)
・2013年11月14日~11月18日(5日間)
・2016年1月6日~?

 

 

③新・江ノ島水族館

江ノ島水族館でもたびたび展示。2010年に刺し網で捕獲された130センチのメスが搬入されましたが、1時間ほどで死亡したそうです。

・2010年3月3日~3月3日(1日間)
・2018年1月20日~?
・2018年12月30日~?

 

6.ミツクリザメの動画

動画1.水槽の中で小型のミツクリザメが硬骨魚に食らいつく様子

動画2.ダイバーの腕に咬みつかせるところを撮った有名な動画

動画3.ミツクリザメの標本

→その他のミツクリザメの動画

 

7.ミツクリザメが出てくる映画

そもそもミツクリザメが狂暴なサメではないので、サメパニック映画に出てくることはないです。唯一それらしい亜種が出てくるのが『ジョーズ・イン・ツナミ』という映画。大地震の後に津波が押し寄せて、それに便乗して海底から目覚めた古代ザメが人々を襲ってくるという映画。

このブログ内でもレビュー書いてますが、まぁ、典型的なB級サメ映画で、ミツクリザメの本来の生態などガン無視で制作されています。そもそも登場人物が「絶滅したはずのミツクリザメよ!」とか言いやがる。まぁ、ご興味とお時間あればどうぞ(笑)

 

【映画】ジョーズ・イン・ツナミ
ジョーズ・イン・ツナミ個人的にサメ映画強化月間、絶賛開催中でございます。とりあえず片っ端から目に留まったサメ映画をむさぼっていくよ!ほい、今回は『ジョーズ・イン・ツナミ』です。原題...

 

また、自分は観てないですが『ガメラ対深海怪獣ジグラ』に出てくる怪獣ジグラはミツクリザメがモチーフなんだそうで。たしかに吻のように飛び出た部分と顎は似てる気はしますが。サメっていうか、普通に鳥っぽくない?これ。

 

8.ミツクリザメまとめ

以上、ミツクリザメの生態でしたー。

 

まだまだ謎が多いサメなので情報量少なくてスマソ。

また信頼できる情報が増えていくようであれば追記していきたいと思います。

あ、毎回書いてますが、私自身の判断でWebやいろんな書籍から信頼に値すると思える情報をチョイスして書いております。もしかしたら後々に誤情報と発覚するような内容も含まれているかもしれませんが、どうか温かい目でご容赦くださいません(たぶんそれほど見当違いにズレた情報はないとは思うんだけど、いちおう)。

 

さて、次はどのサメにしますかね。

したらな!

 


参考Web:
Wikipedia ミツクリザメ
Wikipedia(英語版) Goblin shark

参考書籍:
ほぼ命がけサメ図鑑
サメガイドブック
世界サメ図鑑

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