アオザメとは
アオザメは、ネズミザメ目ネズミザメ科に属するサメです。体表の背中部分が鮮やかな青色であることからこのように名付けられました。
英名はShortfin mako shark(ショートフィン・マコ・シャーク)。同属にバケアオザメ「Longfin mako shark」という種がいますがこちらは知名度は低く、海外ではアオザメを単に「Mako shark」と呼ぶことが多いみたいです。
アオザメの身体的特徴
体長2~4メートル程度で、ほかのサメより細めの流線型の体型が特徴です。鼻先も細く尖っており、歯も上下ともに細いという、何から何まで細いサメ。背ビレは上下の長さがほぼ等しい三日月型をしています。瞳は真っ黒で白目部分はほとんど確認できません。このあたりは同じネズミザメ科のホオジロザメと共通の部分です。
似ているのはバケアオザメとヨシキリザメあたりですが、バケアオザメは胸ビレが大きくて丸い形をしていて、ヨシキリザメは胸ビレがもっと露骨に長くて、猫のような目をしているので区別は簡単です。
↑バケアオザメ(左)とヨシキリザメ(右)
アオザメの生息域
世界中の海に住んでいますが、基本的には外洋性です。そのため通常、漁以外で人と接する機会はほぼありません。逆に言えばそのせいで生態はまだはっきりとわかっていない部分が多いサメでもあります。
主食はカツオ、マグロ、イカ類など。食物連鎖の上位にいる種なので天敵というのは少ないですが、やはり幼い個体はホオジロザメやシャチの犠牲になるケースがあるようです。
サメの中でも泳ぐスピードが速いアオザメ
サメの中で最速で泳げると定評のあるサメで、その速度は時速35kmを超えるとも言われています。動画で水中の獲物を追いかける姿を見る限り、瞬間的にはもっともっと速度が出ているようにも感じますが。
アオザメやホオジロザメが属するネズミザメ科のサメの体には奇網という特徴があります。奇網とは毛細静脈と毛細動脈が緻密に入り組んだ熱交換システムであり、これによって体温を標準より高めに保っておくことによりいつでも筋肉を活動的な状態にしているのです。ちなみにマグロやカジキなどにも同様の特徴があります。
この奇網による運動能力もあってか、アオザメは空中へのジャンプ行動が出来ます。このジャンプはブリーチングと呼ばれ、ほかにはニタリなんかも同様の行動をとることができます。しかし理由ははっきりしておらず、興奮からくる行動なのか、寄生虫を落とす為なのか、いまの時点では確かなことは何もわかっていません。
人間にとってのアオザメの危険性
英名についている「マコ(Mako)」というのは「人食い」という意味ですが、前述したとおり、外洋性のサメなので人に対しての事故はまず起こりません。人が外洋で遊泳すること自体普通はありませんので。しかし、万が一遭遇した場合はやはりそれなりの危険が伴います。餌が少ない外洋で泳ぐ生命体は間違いなくサメにとって興味の対象になってしまうでしょう。
実際にあったのは船が難破して外洋で海に放り出されたケース。巡洋艦インディアナポリスの沈没の際には600人ほどサメの犠牲になりましたが、襲撃したサメの中にはアオザメも含まれていたと推測されています。
基本的にサメが人を襲うB級パニック映画においてはホオジロザメが主役ですが、映画「ディープ・ブルー」では遺伝子操作された巨大アオザメが主役。ただし外見だけ見るとどうみてもホオジロザメと混同していると思われる部分が多く、アオザメを正しく描いた映画とはとても言い難い作品です(エンタメ的には名作だとは思いますが)。
アオザメはスポーツフィッシングの対象にも
アオザメは海外でのスポーツフィッシングにおいて人気の魚になっています。獲物として大型であり、引きが強く、興奮させるとジャンプ行動に出る、そして何より「サメを倒す=正義のトロフィー」という考えがその理由のようです。釣り上げたサメの大きさを競い合う大会までやってます。せめてキャッチ&リリースにしてほしいものですが。
近年大型種のサメの数が減少していると報告がありますが、環境保護団体はスポーツフィッシングのサメについてはおとがめなし。けっこうこういう部分はいい加減なのかもしれません。
↑2004年に釣り上げられた全長3.3m、体重432kgのアオザメ
アオザメの生殖行動
ホオジロザメと同じく胎卵生で、子供は雌の体内でほかの卵や兄弟を食べて成長します。成長して親の体内から出てくるときには、なんとその大きさは70cm超え。子供の頃から弱肉強食を叩き込まれたエリートと言えますが、逆に言えばこのやり方だと1度に生まれてくるサメは1~2匹程度で、乱獲などで数を減らしてしまった場合その回復は困難を極めます。
しかしほとんどの国ではアオザメの資源管理は行われておらず、日本だけでも年間千トンが水揚げされてフカヒレやはんぺんなどの原料になっています。このまま同じ水揚げ量のまま進めていっていいものかは疑問が残るところです。
アオザメのドキュメンタリー動画: